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Developers Summit 2025 セッションレポート

成長は“意識すること”から始まる――ことみん氏が語るプロになるために必要なソフトスキルとは?

【14-C-4】私が新卒からプロへと変わる3年間~「エンジニア基礎」研修資料で伝えたエンジニアになるまでの道のり~

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 新卒からわずか3年で、社内研修資料の制作・登壇イベントの実施・カンファレンスでの講演など、多方面で活躍するようになった株式会社ウィルゲートのSRE・ことみん(向平琴未)氏。だが、その歩みは決して順風満帆ではなかった。「社会人としての自覚って何?」――そんな問いから始まったキャリアのスタート。視座を上げ、マインドを言語化し、そして後輩に伝えるまでの3年間で、彼女はいかにして“プロ”のエンジニアへと変化していったのか。若手にも育成担当者にも刺さる、成長のリアルな軌跡をお届けする。

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「必要性を認識すること」が成長のきっかけ

 「私が新卒からプロへと変わる3年間 〜『エンジニア基礎』研修資料で伝えたエンジニアになるまでの道のり〜」と題された本セッション。登壇したのは、株式会社ウィルゲートのSRE・ことみん氏だ。2021年に新卒で入社し、現在は4年目。複数のプロダクトを横断する施策を担当しながら、登壇や技術コミュニティ運営など、社外でも精力的に活動している。

 学生時代は北海道の高専に在籍し、エンジニア学生向けのコミュニティ「LOCAL学生部」に参加。技術カンファレンスへの参加は在学中から続けており、これまでの登壇回数は10回を超える。近年はPHPカンファレンスやObject-Oriented Conferenceなどにも登壇し、今回のDevelopers Summitではコンテンツ委員として運営にも携わった。

株式会社ウィルゲート プロダクト事業部 SRE ことみん氏
株式会社ウィルゲート プロダクト事業部 SRE ことみん氏

 そんな彼女の現在地を象徴するアウトプットの一つが、2024年4月に公開された研修資料「エンジニア基礎」である。この資料は、ウィルゲートの新卒エンジニア向け研修のうち、テクニカルスキルではなく、マインドやスタンスに特化したものだ。本人も「自慢の資料」と語るように、自身の経験を土台に練り上げられた渾身の内容となっている。

 「エンジニア基礎」は200ページ超に及び、プロ意識、視座、質問力、コミュニケーション、ドメイン知識、キャッチアップ力、振り返りの方法、認知負荷を意識した実装など、エンジニアとして働くうえで欠かせない姿勢を網羅している。その完成度の高さから、公開直後から大きな反響を呼び、わずか数か月で20万PVを突破。実演イベントでは、参加登録が1,000人を超えるなど、社外からも高い関心を集めた。

 「私自身がこの3年間を振り返って、『あのとき、こういう考え方を知っていれば、もっと早く成長できたかもしれない』という要素をすべて盛り込みました。後輩たちの成長が、少しでも加速すればいいなと思って作りました」(ことみん氏)

「エンジニア基礎」は社内外から大きな反響を得た
「エンジニア基礎」は社内外から大きな反響を得た

 では、その3年間とはどのような道のりだったのか。当時を振り返る彼女は、「本当に0からのスタートでした」と苦笑する。

 配属先は、マネージャー1名、先輩2名、そしてことみん氏の計4名という開発チーム。学生時代とは桁違いのコード量、複雑なビジネスロジックに直面し、「難しさに圧倒された」と語る。それでも、ペアプロを重ね、タスクを一つひとつこなしていくなかで、先輩たちから「できるようになってきたね」と声をかけられる機会も増えていった。

 だが、入社から半年ほどが過ぎたある日、上司との1on1で転機が訪れる。

 「『社会人としての自覚がちょっと足りないんじゃない?』って言われたんです。あと、『視座が低いよね』とも。そもそも“視座”って言葉すら、当時は知らなかったくらい。あとで慌ててググりました(笑)」(ことみん氏)

 仕事には真面目に取り組んでいたつもりだったが、「他の先輩たちが何をしているか」を気にかけたことすらなかった。というより、それが必要だという発想自体がなかったのだ。

 上司のフィードバックは、彼女がのちに躍進する第一歩となった。それはすなわち、「必要性を認識すること」から始まる、成長の出発点だった。

1年目、意識の変化で行動も自然と変化

 1年目のある日、仕事の体制面でも大きな転機が訪れる。4人構成のチームのうち、実装を担っていた先輩が退職し、もう1人の先輩も別プロジェクトへの異動が決まったのだ。新しいメンバーの着任は決まっていたものの、それまでの1〜2か月は事実上、ことみん氏1人で開発を回す体制となった。

 「開発も障害対応も、自分がすべて担当しなきゃいけないわけです。『今のうちにたくさん吸収しないと』『先輩がいなくなったらやばい』って、本気で焦りました」(ことみん氏)

 危機的な状況を前に、ことみん氏の中に“このままではいけない”という強い当事者意識が芽生えた。意識が変わったことで、実装タスクをこなすだけでなく、ビジネスサイドとの要件調整や、インフラチームとの連携といった周辺領域の業務にも手を伸ばすようになった。さらには、ユーザーからの問い合わせに対する調査・回答、不具合の原因調査や障害対応など、担当する業務が広がっていった。

 「今では当たり前にやっていることですが、当時の私は『先輩がやってくれる』と思っていた仕事。でも、気づけば自分から取りに行くようになっていました」(ことみん氏)

意識の持ちようを変えたことで、業務範囲までもが変わっていった
意識の持ちようを変えたことで、業務範囲までもが変わっていった

 任されたからやるのではなく、自ら動く。そうした意識の転換が、行動の変化と成長を導いたのだ。かつて「社会人としての自覚が足りない」と指摘されていた時期の姿は、すっかり過去のものとなっていた。

 変化の具体例として彼女が挙げたのが、Slackの使い方だ。以前は、通知を受け取っても「なんとなく眺めているだけ」で、先輩が対応してくれるという前提があった。だが、それが自分の守備範囲に変わったことで、メッセージにも意識的に目を通すようになり、対応にも主体的に関わるようになっていった。

 行動が変われば、姿勢も変わる。知らず知らずのうちに、新卒として背負っていた「初心者マーク」は外れていた。そして迎える2年目、彼女の視座はさらに広がっていく。

次のページ
プロダクトの歴史を捉える視点を学んだ2年目

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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夏野 かおる(ナツノ カオル)

 博士。本業は研究者。副業で編集プロダクションを経営する。BtoB領域を中心に、多数の企業案件を手がける。専門はテクノロジー全般で、デザイン、サイバーセキュリティ、組織論、ドローンなどに強みを持つ。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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